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アストラル

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××12年 黒と白で覆われた世界。 キノコのようでキノコでなく、結晶石のようで結晶石でない不思議な固形物。 触ってみてもやわらかくもなく、さほどかたいわけでもない。 本当に不思議なものだった。 最初は、楽しい夢だったかもしれない。色のついたお花や虫がいたかもしれない。 いつからだろう……? 色もなく、誰もいない面白みのない世界でただ一人ぽつんと立っていたのは…… 少女は、探した。 人っ子ひとりいない不思議な世界を泣きながら駆け回り、人を…いや人じゃなくてもよかったかもしれない。 音も色も生物もない世界に、ただ一人残された感覚に耐えられなかった。 だから、なんでもいいから私を一人にしないで…と少女は心の底から願った。 ――ボクが相手しようか? どこからか聞こえた声。 少女は、声の主を探そうと必死になって周りを見渡した。 だけど、誰もいなかった。 「君は誰?どこにいるの?」 少女の問いに声の主は、一切答えようともしなかった。 なぜ、声の主は少女の問いに答えなかったのか? ――もう朝だよ?今度会おうね…… 声の主はそう言って世界は崩れていき、真っ黒になる。
ちゅんちゅんー。 鳥たちのさえずりが聞こえ、少女はまだ寝ていたい重い体をのそーっと起こし一階にある洗面所へと足を運ぶ。 顔を洗ったり歯を磨いたりと、学校へ向かう準備をしている間になぜまだ寝ていたかったのかとずっと考えていた。 少女は、中学1年。 近所にあるごく普通な学校に通っている。 宿題などやることは先に済ませ、規則正しく21~22時に寝て起きるのはいつも6時だ。 しかし、今日に限って学校に着く時間がギリギリになってしまう7時に起きてしまったのだ。 「早くしなよ!あと、10分で電車来ちゃうぞ」 制服に着替え終わったタイミングで下の方から母親の急かす声が聞こえ、少女はそれに一言だけで答える。 「分かってる」 ガチャッと勢いよくドアを開け駅へと一気に走り抜ける。 改札にて、定期カードをかざしてホームへ向かう。 ホームに着いた時にはビーと音が鳴って今まさに閉まろうとしていた。 電車に駆け寄ろうしたときにドアがガシャンと音をならした。 「あー」 「いってもうたなぁ」 少女が、あまりに落胆して何も言葉に表せずボーッと突っ立っていると、後ろから関西弁で少女の気持ちをそのままいってくれたかのようだった。 彼女自身も乗り過ごしただけかもしれないが、少女にはそう感じていた。 「えっと、あなたは?」